宇部市・山陽小野田市・山口市の「このまち医療ガイド」

医療相談Q&A こんな症状には
どうすればいい?

先生に教えて欲しい様々な質問に、わたしたちの街のドクターが答えます!
サンデー各紙で掲載中の「医療相談Q&A」「先生おしえて!!」の記事を掲載しています。
※このコーナーは、よくある病気や症状について専門医の立場から解説していただくもので、読者からの相談を受けて回答するものではありません。

Q.

父にがんが見つかり入院し手術をしたのですが、その後の回復が思わしくなく点滴での栄養と人工呼吸器につながれた状態で入院が長く続いています。元気な時に父は「最期は自宅がいいい」とはっきり話しており、何とか自宅で少しの間でも過ごさせてあげたいと願っています。何とかできないでしょうか?

A.

 お父様のお気持ちを是非かなえたいとのお気持ちが強く伝わってきます。特にコロナ禍で面会もかなり限られ会えないことでのお父様、ご家族の皆様のお気持ちは非常に辛いものであろうかと察します。
 お父様のような重症の方も在宅での療養が絶対に無理ではありませんが、病状により自宅での療養が本人・家族にとってより苦痛になる場合もありうるのでかなり慎重に考えていかなければなりません。自宅に退院できうる病状であるのか?在宅診療を行える医師・訪問看護師がいてその医師・看護師が必要な人工呼吸器や苦痛緩和の対応などが可能かどうか?自宅に帰ってからの介護にかなり負担が大きいことも考えられるのでご家族にその対応が可能かどうか?交代して介護できる人が複数いて疲労にならないようにできるか?場合によってはお父様の命を縮めてしまうことがあることをご家族が覚悟できるかどうか?そもそも病状が自宅までの移動に耐えうる状態なのかどうか?病院の主治医と在宅医との間で十分な相談ができているのかどうか?など様々な課題をクリアできてようやく自宅に退院することができると思います。お父様の状態の詳細を判りかねるので退院できるできないのお返事はここでは出来かねますが、在宅診療でも人工呼吸器や24時間の点滴治療、胃瘻、尿や他の部分に管が入っても、訪問看護師の訪問を頻繁に行い24時間対応の医療看護の対応が可能であれば基本的には在宅療養は可能で、そのような状態でご自宅で落ち着いて療養中の方も実際におられます。可能性はゼロではありません。
 今の入院での治療で状態が改善し十分退院可能な状態になればもちろん喜ばしいことですが、そうでない場合はご家族と病院の主治医・在宅医、ケアマネージャーなどを交えて退院し自宅療養が可能かどうか相談の場を設けることが必要と思います。そこでクリアせねばならない課題が見つかり在宅療養を行うことが現実的な事がどうかが判ってくると思います。すぐに退院させたい旨を主治医に相談していただき、お父様、ご家族の皆様の希望されるようにご自宅で少しの間でも過ごせることを願っております。

(2021年11月5日 サンデーうべ・ワイド掲載)

生協小野田診療所 所長
内科・家庭医療科・在宅療養科
廣田 勝弘先生
生協小野田診療所廣田先生

■プロフィル

日本プライマリ・ケア連合学会認定医・認定指導医
山口大学医学部 臨床講師
日本在宅医療連合学会 認定専門医

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