宇部市・山陽小野田市・山口市の「このまち医療ガイド」

医療相談Q&A こんな症状には
どうすればいい?

先生に教えて欲しい様々な質問に、わたしたちの街のドクターが答えます!
サンデー各紙で掲載中の「医療相談Q&A」「先生おしえて!!」の記事を掲載しています。
※このコーナーは、よくある病気や症状について専門医の立場から解説していただくもので、読者からの相談を受けて回答するものではありません。

Q.

ノロウイルスで胃腸炎にかかったのですが、症状はよくなり出勤しようとしたのですが、職場から治ったかどうかを検査をしてもらって診断書をもらって来いと言われました。ノロと診断された病院にかかっても「証明はできない」と言われ帰されてしまい憤慨しています。上司は「診断書がないと仕事に戻れない」と言うし正直困っています。どうしたらよいですか?(35歳男性、飲食店勤務)

A.

 胃腸炎で苦しんだ上に、診断書のことでかなり困っているようですね。
 ノロウイルスはみなさんご存じのように毎年この時期から流行する激しい嘔吐下痢を起こすウイルスで、特に飲食店勤務ということでお客さんに提供する食事から感染させてしまうと、社会的な問題になるので職場としてもかなり敏感になっていると思います。
 インフルエンザと違い、特効薬になるお薬もなく、脱水にならないように水分をこまめに補給し自分の抵抗力で治していかなければなりませんが、嘔吐下痢、微熱などの症状はおおむね2~3日、長くて4~5日以内には治まる事がほとんどで、余程抵抗力の低い子供やお年寄り、重篤な病気を持っている人以外ではその時期が過ぎれば問題になることはほぼありません。問題はウイルスを他の人に広めてしまうことなのです。実は症状が治まっても通常1週間程は便の中にウイルスが出てきており、長い人で2~3週間は出続けることもあり、嘔吐下痢がある時期と比べ周囲への感染の危険性はかなり低くなるものの、便から他の人に感染する可能性はあります。これが厄介で、完全に便からウイルスが消えてしまうまで職場や学校を休むことが感染を確実に広げない確実な方法になります。ただ現実問題そうすると社会活動が滞ってしまい、経済的損失は計り知れないものになってしまいます(子どもがかつて2~3週間学校を休むとすると親はその間一緒に仕事を休めますか?)。とはいえ症状が治まった後にも、トイレの後の手洗い、トイレの便器やドアノブの洗浄、タオルの供用をしないといった対応でかなり感染を広げる可能性は十分低くできます。そこを十分注意すれば感染拡大は抑えることができます。この対処が非常に大切です。
 ノロウイルスが便に出ているかどうかの検査は、病院でその場でわかる検査キットでは「ウイルスがいるのに検査は陰性」となることが多く、より正確に診断しようとすれば、特殊な遺伝子検査などで、結果が出るまで数日から1週間かかり、費用も高く現実的ではありません。ただ大量の食品を扱う職場や老人ホーム、病棟などの感染拡大が非常に問題になってしまうような場合には感染の有無の診断は状況に応じ検査を行うことは必要たと思います。現実的には「治ったか?」の診断は「嘔吐下痢が治まった時点でひとまず治ったとして、「でも便からは広げるかもしれませんよ」として手洗いなどの対策をしっかりすることで周囲への感染拡大を抑えられると考えるべきでしょう。どの段階で職場に戻ってもよいかは、正直職場や学校での規定に沿うしかないでしょう(学校保健法でも出校停止の規定はありません)。最終的には職場と医師の間で相談すべきと考えます。あなたの場合は診断を受けた医師が対応してくれないのであれば、他の医療機関に受診しそこで相談し、最終的にはその医師と職場の管理者と相談して決めていくことがよいでしょう。

(2017年12月2日 サンデーワイド掲載)

生協小野田診療所 内科・家庭医療科所長
廣田 勝弘先生
生協小野田診療所廣田先生

■プロフィル

生協小野田診療所 内科・家庭医療科 所長 日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指定指導医
山口大学医学部 臨床講師

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